切るか切られるか

 髪を切りたい。

 実際は、髪を切るのは他人なのだから、髪を切られたい、というべきなのかもしれない。この言葉は、他動詞なのに自動詞化していると思う。性行為における「いく」のようなものか。どこにいくのでしょうか。

 それはともかく、とりあえず、髪を切りたい。

 私の家の近くに、店員が全員女性で、髪型がみんな同じ、という床屋がある。しかもその髪型が微妙なショートカットなので、さながら北朝鮮の人々のように見える。付け加えると、全員同じコスチュームである。なぜかアディダスだか日本代表だかのサッカーユニフォーム+ミニスカート。割と目に毒。というのもその店員がほとんど30代以上だからだ。ある意味、犯罪であるとも言える。刑法にはないのだろうが、即座に逮捕していきたい。
 私は、ひそかにこの店を北朝鮮床屋と呼んでいる。喜び組床屋でもいい。ちなみに、なぜか、ガラス張りである。新手の羞恥プレイか。1万円プラスでスペシャルマッサージとかあるんだろうか。
 なお、聞いたところによると、その店は少しお高めらしい。このことが、私がその店で髪を切るのにふみだせない理由の一つとなっている。さすがに何千円も出して自らをネタの材料に差し出すのには若干の抵抗がある。あとわずかの勇気が私には足りない。
 というかそんな勇気はいらないと思った。